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2章 第2話 

 まあそんなこんなで二学期がはじまり、実力テスト後のホームルームで委員会決めがはじまった。9月の半ばにある文化祭に向けて、早速色々決めなければならないのである。
 一応内申点のためにエミは委員会に入ろうと決めていた。黒板にずらりと並べられた委員会名をじっと眺め、前期もやっていた図書委員の文字の下に名前を書く。別の委員会に入ってもよかったが、新しいことを覚えるのが面倒だったからだ。それに貸出カウンターでの業務は嫌いではなかったし、継続してもいいだろうと思っていた。
 そうすると後ろから和勝がやってきて、エミの名前の下に名前を書いた。エミは「何で?」と声が出そうになったが、ここで声を上げるわけにも行くまい。しずしずと自分の席に戻って、黒板を眺めた。和勝が書いたあとに女子が数人図書委員の所に名前を記入している。およそ本には微塵も興味のなさそうなギャルたちなのだが、きちんと委員会の仕事をこなしてくれるのだろうか。
 案の定志望人数の多い委員会はじゃんけんになり、図書委員ももれなくそうなった。エミが最初にじゃんけんでパーを出し一抜ける。一切接点のないギャルと一緒の委員会になるのは、ちょっと気まずいな……と思っていた所和勝が勝ち残ったので少しホッとした。
「よろしくなエミちゃん」
 そうにこにこしながら和勝に声をかけられ、エミは無感情な声で「はい。よろしくおねがいします」と返した。

 横に居るギャルの中村さんからの視線が痛い。和勝がクラスの女の子を「ちゃん」呼びすることは無いので、どうしてこの子だけ? と思っているのだろう。後で呼び方を戻してくれるように説得しなければいけない。
 それから文化祭での出し物を何にするかの案だしが始まり、結局意見がまとまらずに次のホームルームまでの議題へと繰り越しになった。放課後は各種委員会に分かれての説明会である。学校生活が始まったな、という感じだった。
「エミちゃんはさ、今年の文化祭何がしたいとかあるの?」
 委員会のある教室へ歩いていく間、和勝はエミに話しかける。
「特に無いです。労力がかからなくて、面倒くさくないものが良いですね。何かの展示とか楽でいいんじゃないですか」
「そんな夢のないことを……やっぱりお化け屋敷とか、屋台出したり、とかやりたいだろ」
「外に屋台出したりは、3年の先輩にならないと出来ませんよ」
「えー、そうなんだ!?」
「この学校はそうですね。予算的な都合なのかしら」
「残念だなあ。屋台やりたかったのに、3年までお預けか……」
「保健所の検査とか色々あってダルくないですか?」
「それでも屋台って夢があるじゃん」
 委員会の教室に入り、黒板に書かれている座席表のとおりに座ると、他のクラスからも図書委員に選抜されたであろうメンバーがやってきた。

 たまたま目のあった同じ文芸部の相沢右京くんが小さく控えめに手を振ってきた。背の高い眼鏡の大人しい温厚な男の子だ。エミも小さくそれに振り返す。彼も前期一緒だったから、委員会に居てくれると助かる。
「誰?」
「おんなじ部活の人ですよ」
「仲いいの?」
「まあそれなりに」
「ふーん」
 それからしばらくしてから全体説明がはじまり、滞り無く委員会は終了した。去年と全く同じ業務内容である。受付の仕事のシフト表が最後に配られ、そこから解散となった。
「エミちゃんはこれから部活?」
 エミが歩き出すのにつられて、和勝もついてくる。
「そのつもりですが」
「俺もついて行って良い?」
「なんで?」
「今日俺部活ないんだ」
「和勝く……飯綱くんって部活なんでしたっけ」
「ちょっとなんでいい直したの!?」
 和勝はショックを受けた柴犬のような顔をしていた。
「そこまで仲良くないので、呼び方をもとに戻してもよいかと」
「えーっ!? 俺達異世界一緒に行った仲だろ!?」
「声が大きいですよ。あとエミちゃん呼びもやめてほしいです」
「やだよ。仲良くなったと思ってるし」
「クラスの女子の目線が怖いんですよ。あなた人気があるんですから、もうちょっと気とか使えないんですか」
「俺がエミちゃんのこと、エミちゃんって呼んで何が悪いんだよ」
「女子が嫉妬するんですよ」
「そんなことある?」
 和勝は本当にわけが分からないという顔でエミを凝視した。
「あります」
「じゃあ二人のときだけエミちゃんって呼ぶな」
「一貫して蛇塚さんでいいのですが……」
「エミちゃんも二人だけの時に、和勝くんって呼んでくれていいんだぜ」
「嫌ですが」

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